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チェンマイ未来厨房

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電子レンジ調理生活

第2日目: 電子レンジ神話(Microwave Myths)=事実と虚構

デービッド・シャルト(David Schardt)
=非営利団体「公益科学センター(Center for Science in the Public Interest、CSPI)」の栄養学者
栄養健康増進ニュースレター2005年4月号(Nutrition Action Health letter)より

「われわれは家庭用電子レンジで調理された食品の被害を懸念している」という電子メールが、ニューヨーク州北部の新聞の編集者からに昨年11月、栄養健康増進ニュースレターに寄せられた。
「われわれがオンラインなどで見つけられる情報源によると、電子レンジで調理された食品が発がん性物質を生成し、ヨーロッパの一部の保健当局は、人間の健康に危険として電子レンジを禁止している。」
多くの人の電子レンジに対する不安は解決されていない。howthingswork.virginia.eduでマイクロ波に関する質問に答えている、シャーロッツビルにあるバージニア大学の物理学者ルイ•ブルームフィールド(Louis Bloomfield)は、「おそらく、その理由はなぜ食品を調理するのか、明らかな理由がないことである。」と述べている。
そして、こうした疑問への警告やインターネット経由での噂の速度が、より緊急になってきている。ここでは虚構からマイクロ波の事実をいかに分離するかである。

これは、すべてハンス・ヘルテル(Hans Hertel.)が皮きりとなって始まったものである。スイスの食品化学者と限られた7人のベジタリアン仲間が1980年代後半に2ヶ月間ホテルへ籠もり、牛乳や野菜を電子レンジや他の方法で調理し食した。
ヘルテルは驚くべき見解を明らかにした。電子レンジで調理した牛乳や野菜を食べることによって、人間の血液中に「癌の初期状態に発生する病理学的プロセスの初期段階の指標を示す」変化が引き起こされた。
ヘルテルは実際に電子レンジで調理した食品が癌を引き起こすことを見つけることはできなかった。そして、他の研究者が再現してみなかった彼の研究は、何らの査読もされず科学雑誌に発表もされなかった。
彼の研究でどのような方法で測定し、何が測定されたかについて、もっと知ることができければ、彼が見つけたものや彼の調査結果を評価することは不可能であると、プルマンにあるワシントン州立大学の食品科学者バリー•スワンソン(Barry Swanson)は述べている。

ヘルテルは、公開の席から外されてしまった。そこで米国の研究者として唯一、ウィリアムコップ(William Kopp)が、ソ連の冷戦時代の研究で電子レンジの危険性が証明されていたと主張する記事を1996年に書いた。
「電子レンジで調理した食品を摂取した人々は、統計的に胃や腸の癌の高い発生率と、それに加え末梢細胞組織の一般的な変性と、徐々に消化と排泄システムの機能衰弱が見られた」とコップは書いている。
ソ連の研究はこれまで公式に発表されたものではなく、それが実施されたという研究所は、今はベラルーシ共和国にあるもので、もはや存在していない。(旧ソ連は、短い期間、電子レンジを禁止されていたかもしれないが、現在は国家としてそれらを禁止してはいない。)伝えられるところによれば、家電業界から迫害が加えられると信じ、コップ自身が名前を変え、消息を絶った。
ヘルテルとコップはもはや周りにいないが、その根拠のない警告は、いまはすべてインターネット上でなされている。

「電子レンジで調理した食品を長期間食べることで、人間の血液中に癌細胞を増加させる」と、イリノイの代替医学の医師ヨセフ・マーコラ(Joseph Mercola)が運営しているインターネット上の「#1自然健康サイト」(www.mercola.com)の記事「あなたの電子レンジを捨てるための10の理由」で述べている。

電子レンジで調理した食品は「がんのレシピ」であると、医療ジャーナリストのサイモン•ベスト(Simon Best)は、彼の電磁波の危険性と治療のWebサイト(www.em-hazard-therapy.com)で付け加えている。ハーテルとコップはさておき、これは、われわれが電子レンジについて知っていることである。

◇電子レンジの内部
「電子レンジはレーダーとほぼ同じで電波を使用して食品を加熱している」、カリフォルニア州リバモアのローレンス•リバモア放射線研究所のジム•フェルトンは述べている。電子レンジで使用される周波数の約2,500 MHz(メガヘルツ)は、ラジオ、テレビ、携帯電話の信号を送信するために使用される周波数よりも強力である。それは紫外線、可視光線、X線よりも数千倍弱く、一部の食品を照射するために使われるガンマ放射線よりも数百万倍弱い。
「一方、X線、ガンマ線(食品照射ではないが)、さらには直射日光が癌を発生する可能性があるが、電子レンジのマイクロ波放射は、あなたのDNAに損傷を与えるに十分な電力を保持していない。」バージニア州マクリーンの保健物理協会のゲイリー•ゼマンは言う。この協会は放射線安全を推進する非営利科学団体である。
2,500 MHzのマイクロ波の電波は、食品中の水、脂肪、および糖によって吸収される。それにより調理食品に熱が生成される。電子レンジが停止されると、これ以上のマイクロ波は放射されない。そして、電子レンジにはマイクロ波は存在しなくなる。
「電子レンジの中でのマイクロ波の寿命は百万分の1秒程度である」と、物理学者ルイ•ブルームフィールドは述べている。

◇癌
インターネットで漂っている警告は無視しなさい。電子レンジで調理した食品が癌を引き起こすという「証拠」は、ハンスヘルテルとウィリアムコップの主張で煮詰まった。
「固まった証拠は何もありません」とカリフォルニア大学デービス校のがんセンターのがん対策副所長でもある、ローレンス•リバモア国立研究所のジム•フェルトン(Jim Felton)は言う。
科学者はこうした関連記事を探す時間とお金を費やしない理由を説明することがある。「私は正直なところ、有効な科学的研究を見たことがないと伝えることができ、しかも私は、電子レンジで調理した食品が癌を引き起こすことができるかどうかをテストするための、料理研究のほとんどに注意を払ってきている。」フェルトンは述べている。「実際、私の研究ではまさに反対の結果を示唆している。」

肉や鶏肉を焼くか揚げると、癌を引き起こす可能性のある複素環アミン(heterocyclic amines)を生成する可能性がある。フェルトンと彼の同僚は、まず焼く前に肉を電子レンジにかけ、肉汁を出して捨てることで、最も可能性の高い発癌物質は、肉汁と一緒に失われる。(Food Chem. Toxicol. 32: 897, 1994.)
「私は通常、患者に肉をグリルする前に、肉を電子レンジで1~5分調理し肉汁を捨てるよう勧めている」ツーソンのアリゾナ大学アリゾナ癌センターの研究者シンディ•トムソン(Cyndi Thomson)は述べている。


◇栄養素
電子レンジで食品を調理すると「栄養素を破壊し、健康に危害にさらしている」と医師のヨセフ・マーコラ(Joseph Mercola)は、家庭にある電子レンジを捨てるのを勧め、すくなくとは3分の1は、生のまま食べるよう警告している。

「実際には、多くの水を使用せず、食品を煮過ぎないならば、電子レンジでの調理は、他の調理方法よりもより多くの栄養素を保持している」食品科学者のバリー•スワンソン(Barry Swanson)は述べている。
「何らかの理由で、人々は加熱によってビタミンが壊されると思っているが、ほとんどのビタミンは実は熱に対して非常に安定している。栄養素は主として水の中に出てしまう、野菜には大量の水が含まれているので、電子レンジの場合、野菜に水を追加する必要はない。」
多すぎる水は明らかに問題で、欧州の研究者の2003年の研究(J. Science Food Agric. 83: 1511, 2003)では、穏やかに作用するよう蒸したものと比べたところ、水を入れたボウルにブロッコリーを入れ電子レンジで加熱すると、ほぼすべてのフラボノイドが破壊されていたことが報告された。(証拠は乏しいが、フラボノイドは、心臓病や癌に対して何らかの保護してくれる植物化合物である。)
この研究は、家庭での電子レンジによる加熱とは無関係であるとスワンソンは述べている。「基本的に、研究者は、あまりにも多くの水を加え、ブロッコリーが死んでしまうほど電子レンジで加熱した。」

◇ラップ、容器や包装
プラスチック・ラップ、冷凍食品トレイ、"電子レンジ対応の容器や包装は安全なのか。
■ラップ
インターネットや電子メールでプラスチック・ラップが電子レンジでの加熱時に発癌物質のダイオキシンを放出するという警告が広く出回っている。
「ダイオキシンの前駆物質は、ラップには含まれていないので、それは化学的に不可能である」とイリノイ州の国立食品安全技術センター(the National Center for Food Safety and Technology)の食品包装部門の教授のジョージ•サドラー(George Sadler)は言う。センターは、学界、食品医薬品局(FDA)、および食品業界からの科学者による共同事業体である。
「われわれは、分解産物としてダイオキシンが絶対発生しないプラスチックを把握していない」とメリーランド州カレッジパークの食品添加物安全性のFDAの事務所のクリスティーナ・パケット(Kristina Paquette)が付け加えている。「おそらく生産する上でフタル酸エステルを用いているラップを使用しないことを警告する別の電子メールを最近見ている」とサドラーは述べている。(フタル酸エステル類は、プラスチックを柔軟にする可塑剤である。)「メーカーは、かなり前にそれらの使用をやめている。」
「電子レンジでの使用がFDAの承認を得ていないプラスチック製の食品ラップを使う場合は、調理する際に、ラップから化学物質が食品に移る小さな可能性があるので、ラップを食品に直接触れないようにしなさい」とクリスティーナ・パケットは言う。しかも「人間で発がん性があるとみなされている構成材料はプラスチック製のラップでは使われていない。」と彼女は指摘している。

■容器や包装
「冷凍食品のように、電子レンジで調理するための食品を店で買った場合、それが入っている容器をそのまま使用するのに100%の信頼を持っている。」とクリスティーナ・パケットは述べている。「しかし、包装容器のポリマーが電子レンジで2回使用すると分解を開始する可能性があるので、それらは通常、1回だけの使用が承認されていることを覚えておくべきである。」
「FDAは、食品包装のメーカーが、新らたに使用しようとする包装構成材料を持つたびに、実施する必要がある厳格な申請手続きを持っている。」とジョージ•サドラーは述べている。「企業は、電子レンジで加熱した際に、包装材料からどのくらいが食品中に移るか測定する必要がある。その後、メーカーはそれらのレベルが安全であることを示すために厳格な毒性評価を行う必要がある。」
(ここで"安全"とは、食品に残留する包装材料が、動物実験で害を引き起こす最低レベル百分の一未満であることを意味している。)企業は、がん、遺伝子損傷、再生あるいは発生物質の影響をテストする必要がある。
「誰もがその安全性に幅を持っていることを確認したいので、電子レンジ用容器のためのFDAのテストガイドラインは、誰もが電子レンジでするだろうあらゆる範囲をカバーしている。」 クリスティーナ・パケットは付け加えている。
これらの安全対策は、スーパーで購入する再利用可能なプラスチック容器にまで及ぶ。 “マイクロ波安全”と表示されたものは、電子レンジで最大240時間までの使用のテストされていることを意味している。(この表示のないプラスチック容器も、安全かもしれないが、それらの容器はテストされていない。)

■加熱体
電子レンジ用ポップコーンの袋には、"この面を上にして"、や"この面を下側に"とはっきりと記されてされている理由は何だろうか。
包装袋の底面には、マイクロ波を吸収し、ポップコーンをポップするために十分に熱くする金属コーティングされた面が含まれている。この加熱体は、食品に対して包装用接着剤のような化学物質の放出を誘発するのに十分な熱を発生させる心配はないと、FDAのクリスティーナ・パケットは述べている。
「ポップコーンの袋の中を見ても、実際には銀色の加熱体が見えない場合があるが、これは加熱体自体を袋の内に封入しているのである。」と、彼女は説明している。これはポップコーン油に化学物質の移行を大幅に削減するのに役立っていると、クリスティーナ・パケットは述べている。

◇電磁波漏れ
電子レンジから電磁波が漏れているか。FDAは、1980年代初頭にそれらをテストしたが、FDAの予算削減と、いくつかの電子レンジが連邦安全基準を満たしていなかったため、それらの実地試験は廃止された。アメリカ食品医薬品局(FDA)の医療機器・放射線保健センター(Center for Devices and Radiological Health)のジョージ•クラウス(George Kraus)は述べている。

2000年には、カナダ保健省(アメリカの保健社会福祉省に相当)は60台の新しい電子レンジや使用している103台の電子レンジをテストした。新しいものすべてと、使用中のもの1台を除いて、米国の規制に類似した、カナダの厳しい電磁波漏えい規制を超えていなかった。基準を満たさなかった1台の電子レンジは23年経ったものだった。
「電子レンジの前面ドアの金属製の格子やドア周りのシールに穴がある場合のみ、マイクロ波の漏れが発生する。」バージニア大学のルイ•ブルームフィールド(Louis Bloomfield)は言う。
そして、万が一に電子レンジから漏れたとしても、マイクロ波を浴びることはない。それらが広がる際に、マイクロ波は急速に強度を失う。それらが小さな漏れから旅してきた頃には、それらは事実上姿を消している。

◇電子レンジの安全な使用
■調理と温め直し
□皿に均等に食品を配置し、必要に応じて何らかの液体を加える。蒸気が逃げるよう緩い蓋でカバーする。(プラスチック製のラップを使用している場合、食品に接触しないようにする。)
□高出力(100%)で肉の大きな塊を調理しないようにする。中出力(50%)で長い調理時間を掛けると、外側部分を焼き過ぎずに、熱が中心部に到達することができる。
□回転テーブルを持っていない電子レンジの場合は、電子レンジで加熱している途中で、食品を回転させるようにする。
□グリルやオーブンで調理する前に、電子レンジで食品を部分的に加熱する場合、できるだけ速やかに電子レンジで加熱された食品を、オーブンなどに移すようにする。暖かい、部分的に調理された食品は、細菌が繁殖しやすくなる。
□食品温度計を使用して、あるいは肉、鶏肉や蒸し卵焼きの電子レンジの温度を確しかめて、安全な温度に達しているか確認する。肉は脂肪や骨の近くではなくまた太ももの鶏肉は最も厚い所の奥の部分に温度計を置く。赤身の肉が75°Cに達すると、鶏肉が82°Cに到達し、蒸し卵焼きは74°Cに達しているか確認するためにいくつかの場所でチェックする。魚はフォークでフレークする。残り物は、74°Cに達するよう加熱する必要がある。
□電子レンジを停めた後も、食品は、熱い部分から低温部分へ熱が流れ調理し続ける。そのため、内部温度をチェックする前に、肉、鶏肉、蒸し焼きなどのような密度の高い食品は、5分間放置するようにする。カット野菜、パン、スープ、飲み物などのような密度の低い食品は、放置する必要はない。
□電子レンジで詰め物をした鶏の丸焼を調理しないようにする。詰め物の有害な細菌を破壊するために必要な温度に達しない可能性がある。
□ホットドッグなど即席食品、調理済みハム、そして残り物のような食品は、蒸して十分に熱くなるまで加熱する。

■解凍
□電子レンジで解凍する前に包装からから食品を取り出すようにする。発泡スチロールトレイやプラスチック・ラップが溶け、有害となる可能性のある化学物質が、食品中に移る可能性があるからである。
□電子レンジで解凍した肉、鶏肉、蒸し卵焼き、または魚は、すぐに調理すること。

■調理器具、容器、ラップ
□調理や再加熱で使用する容器は、電子レンジ対応(microwave safe)と表示されたものを使用すべきで、非装飾ガラスも安心である。
□「テストや承認がされていないので、ヨーグルトやマーガリンが入った食品やトッピングデザート・カップは、電子レンジで再加熱しないように」とFDAのクリスティーナ・パケットは述べている。それらは歪ませたり溶したりすることができ、容器を柔軟にする可塑剤のような化学物質を食品中に移す可能性がある。
□ワックスペーパー、調理袋、パーチメント紙(硫酸紙)、電子レンジ対応紙皿、電子レンジ対応ホワイトペーパータオルは使用しても大丈夫である。(非ホワイトペーパータオルで使用されている染料は電子レンジで食品用として使用が認められていない)
薄いプラスチック製貯蔵袋や食料品袋(それらは溶ける可能性がある)、茶色の紙袋や新聞(金属片や袋を継ぎ目に接着剤が含まれている可能性がある)、またはアルミホイル(危険なアーク放電を引き起こす可能性がある)は、絶対に使用してはいけない。

出典:アメリカ農務省(U.S. Department of Agriculture)から引用
(www.fsis.usda.gov/factsheets/cooking_safely_in_the_microwave/index.asp).
by maicrocook | 2013-05-10 08:03 | 電子レンジ神話

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